産屋




日本の神話に於いて【殺す】ということは

人の世に於ける【殺人】とは全く異なる


神は死なずの理

五行は巡るのが理


つまり【死】とは【一つの形】が終わり【新しい形】が生まれることを指す



木が燃えて炭となる

それは木にとっては【死】であるが、同時に【炭】の誕生でもある

この場合【木】は【火】によって殺されて、そこから【炭】が生まれた・・・となるわけである



加具土命を産んで伊弉冉神は死んだ

そして伊弉諾神は加具土命を【殺し】て、その死骸から様々な神々が産まれた


それと同じように【月読命】は【保食神】を殺すと、そこから様々な食物が生まれた

【天照大神】は怒って【月読命】を夜の世界へと追いやった

それは地球に昼夜が出来て、さらに月の満ち欠けや星の運行を読むことで、様々な生命が誕生し、農業畜産漁業技術が発達していったことがうかがえる

【保食神】は【月読命】によりその姿を変えていったということだ




では

伊弉諾神が伊弉冉神の住まう黄泉の世界から逃げてきて、あの世とこの世の境に千曳の岩戸を閉めたとき二神が言った言葉


伊弉冉神は

『いとしい私の夫よ。 あなたがこんなことをするのなら、 あなたの国の人を一日千人、殺しましょう。』

すると伊弉諾神は

『いとしい妻よ。 あなたが千人殺すなら、 私は、一日に千五百の産屋を建てよう。』

と言った


それは【人の進化と発展】に他ならないだろう



伊弉諾神は最初に言った

『いとしい私の妻よ。 私とあなたで作っている国は、 まだできあがっていない。 どうか、帰ってきておくれ。』

と・・・・・

まだまだ未完成の世界

それを完成させるため、人は誕生と死と再生を繰り返し、成長・発展して進化を遂げてきたはずである


あの世とこの世を司る伊弉諾神・伊弉冉神が、魂を巡らせて「1000人死んでも1500人生まれ来る」世界を作り上げた

魂は巡り成長・発展して人は【完成】を目指して転生を繰り返す

霊は分岐し分霊となり【元となる魂】の成長はさらに加速される



やがて分岐し分霊となった霊は重なり元の魂に習合され、伊弉諾神と伊弉冉神が夢見た『完成した国』へと向かう



すでにそれは始まっているのだろう

過去世と現世の霊が重なり

元の【ひとつの魂】として息づき始めているのを垣間見る


千曳の岩戸を開くとき

伊弉諾神と伊弉冉神が出会うとき

それは完成された世界が現れるとき



今、世界は新たな【産屋】の中にある


直霊を真っすぐに

四魂を調和させよ

魂に己の霊を習合させよ


新たな人

神人和合した真人が

もうすぐ産声を上げるだろう